
店舗を認知してもらうには、まず存在感が重要になる。
看板はあちらこちらに付けているのだが、つい素通りしてしまうお店は割と多い。影が薄いのだ。何が原因なのだろう。
それは、まとまりに欠けているからに他ならない。
こっちの通りから来る車には、この看板、あっちの通りからくる人向けには、あの看板、とやっていると、看板だけがあちらこちらに付いて、ちぐはぐなお店が出来上がってしまう。しかも、それぞれの色やデザインがまちまちだったりすると、もう致命的である。
わたしがまだ駆け出しの頃、ある看板店に勤めていた。そこは、ある大通りに面していて、飛び込みでやって来るお客の割合が比較的多かったのだが、そこの社長は半年に一回は必ずと言っていい程、看板と建物の塗装をやり替えるのである。その際、看板のデザインと建物の塗装は同系色でいつもまとめていた。単なる自己満足と思いきや、驚くことに看板と塗装を一新した後は、飛び込みのお客が必ず増えるのだ。何度もやっていたら、そのうち飽きられると思うだろう。しかし、リニューアルするごとに、「初めて看板屋の存在に気付いた」と言うお客の何と多かったことか・・・。
おわかりいただけただろうか。お店の看板と外装というのは、鮮度が落ちれば周囲の景観に同化してしまうものなのだ。だからこそ、それを逆手にとって、定期的に看板と外装をやり替えれば、人々の目を引き、新規顧客の獲得につながる。
わたしは、この事実から、看板の持つ力を身をもって体験したのだ。そして、潜在的なお客というものは、お店の周囲にたくさんいるのだ、ということも。
しかしながら、もし看板だけで建物の塗装をしなかったとしたら、結果はどうだろう。おそらく、それほどの効果は上げられなかったに違いない。 例えば、店舗のイメージを変えようと思って、内装と看板をリニューアルしたとする。しかし、その程度の変更で周囲の注目を引くだろうか。そのお店の前を毎日車で通りながら、漠然と眺めている人が気付くだろうか。仮に気付いても大きな感動は得られないだろう。
つまり、看板をそれぞれ単独で付けたり変えたりしても、周囲の注目を引くような効果を上げるのは難しいのである。
看板に最大限の広告効果を出させたければ、店舗全体、ビル全体との統一感を第一に考えるべきだ。看板だけなら気付かない人でも、 全体が変われば、何か新しいものが出来てる!と驚きの声を上げるはずだ。
発見される看板とは、外装を含めたビジュアル広告なのである。だからこそ、前述の看板店の社長は、看板と建物の塗装を、必ず同系色でリニューアルしていたのである。
要するに、色によって全体に統一感を持たせるという同一色彩の大型面積化だ。看板を青色で作ったら、店舗やビルの壁面も同じ青色を用いて装飾すれば、統一感が生まれて、単なる点ではなく、ボリュームのある面として認識されるのである。ボリュームがあれば、あちこちに看板を付けなくても大いに目立ち、発見確率が格段に上がるのだ。
下の写真は、その理論の典型的な例である。このリニューアルを施したオーナー達は、集客率のアップに、一様に驚きの声を上げたものである。

2階と3階が店舗だが、うまく一体化させて大きく見せる工夫をした。
さらに、客層を考慮し、落ち着いた色彩で統一。見事なボリューム感を生み出している。

ビルの窓を塞ぐリスクよりも、発見確立のアップを狙った。
看板の大型化と、同一系統の色彩で統一したボリューム感は効果絶大。